令和7年分・8年分の扶養控除申告書で注意すべきポイント
- yasuda-cpa-office
- 3 日前
- 読了時間: 4分
おはようございます!代表の安田です。
2025年(令和7年)12月以後に実施される年末調整から、令和7年度税制改正による新ルールが施行されます。具体的には、以下のような大きな変更があります。
扶養親族・配偶者などの所得要件の引上げ
特定親族特別控除の新設(19歳以上23歳未満が対象)
源泉控除対象親族の定義変更
「簡易な申告書」制度の導入(異動なしの場合の省略可)
これらの改正により、申告書の記載内容や対象親族の扱いが変わるため、従業員・経理担当者ともに注意が必要です。
1.令和7年分(2025年提出)の主な変更点
(1)所得要件が10万円引き上げ
令和7年度税制改正により、以下の対象者の所得基準が引き上げられました。
区分 | 改正前 | 改正後 |
扶養親族・同一生計配偶者 | 合計所得金額48万円以下(年収103万円以下) | 合計所得金額58万円以下(年収123万円以下) |
勤労学生・ひとり親の子など | 同上 | 同上 |
これにより、これまで該当しなかった家族が新たに扶養親族等に該当するケースが生じます。たとえば、所得が年収120万円前後の配偶者や子がいる従業員は、扶養控除等異動申告書を新たに提出する必要があります。「異動月日及び事由」欄には、「令和7年12月1日改正」と記載することを忘れないようにしましょう。
(2)特定親族特別控除の創設
新たに創設された「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満で、合計所得金額が58万円超123万円以下(年収123万円超188万円以下)の親族が対象です。
ただし、この特定親族は令和7年分の「扶養控除等申告書」には記載しません。
代わりに、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」(基礎控除申告書と兼用)を提出します。
👉 扶養控除等申告書(B欄)に特定親族を「特定扶養親族」として記入してしまうミスが多発すると予想されます。提出時には、記載欄を必ず確認しましょう。
(3)源泉控除対象配偶者の年収判定が変更
所得要件自体(95万円以下)は変わりませんが、給与所得控除の最低保障額の引上げにより、年収ベースの判定が「150万円以下 → 160万円以下」に変更されます。
記載要領が旧基準のまま印刷されているケースもあるため、最新の改正金額で判定してください。
2.令和8年分(2026年提出)の主な変更点
(1)B欄の記載対象が「源泉控除対象親族」に変更
令和8年分の扶養控除等申告書では、B欄の記載対象が変更されています。
区分 | 改正前(R7年分) | 改正後(R8年分) |
記載対象 | 控除対象扶養親族(所得58万円以下) | 源泉控除対象親族(所得58万円以下の扶養親族+所得100万円以下の特定親族) |
つまり、58万円超100万円以下(年収123万円超165万円以下)の「特定親族」もB欄に記載対象となります。ただし、100万円を超える特定親族(年収165万円超)は記載不要です。
(2)「簡易な申告書」提出時の異動判定に注意
新たに導入された「簡易な申告書」制度により、前年と異動がない場合には省略提出が可能です。しかし、以下の場合は“異動あり”となり、省略はできません。
特定扶養親族だった子が、翌年に特定親族へ移行した
所得要件の引上げにより新たに控除対象となった
18歳だった親族が19歳となり「特定扶養親族」に該当した
異動の有無は、国税庁のリーフレット「扶養控除等申告書の提出について(令和8年分)」に掲載のチェックリストを活用すると便利です。
3.実務に役立つチェックポイント(抜粋)
年分 | チェック項目 | 注意点 |
R7年分 | 所得要件58万円以下で再判定したか | 扶養・配偶者・勤労学生などすべて見直し |
R7年分 | 特定親族を扶養控除欄に書いていないか | 「特定親族特別控除申告書」で対応 |
R8年分 | 特定親族(所得100万円以下)をB欄に記入したか | 該当者は「特定親族」欄にチェック |
R8年分 | 簡易申告書提出時、“異動あり”を見逃していないか | 異動ありは通常の申告書提出が必要 |
共通 | 源泉控除対象配偶者の年収基準を160万円で判定 | 旧基準(150万円)での誤判定に注意 |
4.税理士からのアドバイス
年末調整で最も多いミスの一つが、「扶養控除申告書の誤記・漏れ」です。今回の改正では、該当基準が10万円引き上げられたことにより、これまで対象外だった家族が新たに該当するケースが増えます。
特に、
学生アルバイトを持つ従業員
パート勤務の配偶者
を持つ世帯では、「前年と同じ」で済まない可能性があります。
経理担当者は、提出書類を受理する際に
所得要件の改正内容を社員に周知
特定親族の取扱い
を間違えないようチェックを徹底しましょう。


コメント