JICPAが「登録上場会社等監査人」の必要人数引上げを検討
- yasuda-cpa-office
- 1 日前
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おはようございます!代表の安田です。
日本公認会計士協会(JICPA)は2026年1月26日、AI開発企業オルツ等の会計不正事例を踏まえ、上場会社監査の信頼性向上に向けた取組方針を公表しました。自主規制機関として、登録上場会社等監査人へのモニタリングを強化し、監査品質の底上げを図る方針です。
本記事では、会計事務所に所属する公認会計士の視点から、今回の方針の要点と、監査法人・上場準備企業にとっての実務的な影響を整理します(文章・構成はオリジナルで、転載ではありません)。
1. 何が起きた?JICPAが「上場会社監査の信頼性向上策」を公表
JICPAは一連の会計不正問題を受け、登録上場会社等監査人に対するモニタリングを強化する方針を示しました。中長期的には、上場会社監査を担う登録上場会社等監査人に必要な公認会計士の最低人数を現状の「5人」から引き上げる方向性も打ち出しています。
ここでいう「5人」は、公認会計士法施行令に定める監査法人の要件(登録上場会社等監査人名簿への登録の前提)として実務上意識されてきたラインです。今回のポイントは、法令要件とは別に“自主規制として”引上げを検討する点にあります。
2. 直近の施策:2026年度レビューから「専門性のある監査チーム」かを点検
JICPAは、2026年度のレビューから、被監査会社の属性に応じて、十分な知識・経験を有する公認会計士が監査業務に関与する体制となっているかを確認するとしています。
特に、AIや暗号資産(ブロックチェーン)を扱う企業を監査する場合には、監査チームの専門性等を点検する方針です。
実務上の示唆上場会社や上場準備企業(AI・暗号資産・IT関連等)では、監査法人側の体制だけでなく、企業側も
取引の全体像(収益認識、評価、ウォレット管理等)
IT統制やデータの整備状況
を、監査初期段階から説明できる状態にしておくことが重要になります。
3. 2027年度レビューから:品質管理システムを「運用面まで」モニタリング
2027年度のレビューからは、登録上場会社等監査人に求められる品質管理システムについて、整備の有無だけでなく運用状況に踏み込んだモニタリングを行う方針が示されています。
あわせて、2026年8月を目途に、不正リスクの識別・評価、不正リスク対応手続について、レビューの重要度判断における基準を策定し周知する、とされています。
実務上の示唆監査法人側では、品質管理(ISQM等)を“文書として整える”だけでは足りず、
実際に案件ごとにどう運用しているか
不正リスクにどう対応しているかが問われやすくなります。
4. 上場準備企業にも影響:監査法人交代時の情報連携(守秘義務と契約書ひな形)
取引所が「上場準備期間中に監査法人が交代している場合、前任者から交代経緯等を確認する」対応を取ることを踏まえ、守秘義務の観点から監査法人等が対応すべき事項を、2026年3月を目途に契約書ひな形等で周知する方針も示されています。
実務上の示唆上場準備企業にとっては、監査法人交代(いわゆる“リプレイス”)の局面で、
交代理由の説明
監査上の重要論点の引継ぎ
守秘義務と情報提供の線引き
が、より厳格に問われる可能性があります。
契約書・レターの整備は、企業側も早めに確認しておきたいポイントです。
5. 中長期の焦点:「最低人数5人」を引上げへ――業界再編の可能性
中長期的な施策として、登録上場会社等監査人の人的体制に関する要件の引上げ(最低人数の引上げ)を検討するとしています。会則等の改正が必要なため、早ければ2027年の総会での決定を目指して詳細を詰める方針です。
また、公認会計士・監査審査会のレポートでは、監査法人の人的体制として常勤公認会計士が10人未満の法人が7割超であることが示されています(「6~9人」114法人、「5人以下」91法人)。新要件が規定されれば、中小同士の合併等による業界再編が起きる可能性がある、と記事でも指摘されています。
6. 付随情報:監査法人シドーに関する調査終了(オルツ案件)
JICPAは同日、オルツ上場時に監査を担当していた監査法人シドーに対する監査・規律審査会の調査が終了したとも公表しています。禁止行為(相当の注意を怠り、重大な虚偽等のある財務書類を重大な虚偽等がないものとして意見等を表明)があったと認定し、今後は綱紀審査会の審査を経て処分が決定する見通しとされています。
まとめ:監査法人は「ブランド」だけでなく「体制・専門性・品質管理」で見られる時代へ
今回のJICPA方針は、短期的にはモニタリング強化(専門性の点検、品質管理の運用モニタリング)を進めつつ、将来的には登録上場会社等監査人の人的体制要件(最低人数)を引き上げるという二段構えです。
上場会社・上場準備企業にとっては、監査法人の選定・継続可否の判断軸がこれまで以上に
監査チームの専門性(AI・暗号資産等)
品質管理の運用
交代時のガバナンス(引継ぎ・説明責任)
へとシフトしていく可能性があります。


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