ASBJが「後発事象に関する会計基準」を公表
- yasuda-cpa-office
- 1 日前
- 読了時間: 5分
おはようございます!代表の安田です。
企業会計基準委員会(ASBJ)は、2026年1月9日に企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」等を公表しました。
従来は監査基準報告書560実務指針で扱われていた後発事象の会計面の取扱いを見直し、独立した会計基準として位置付けたものです。適用開始は2027年4月1日以後開始事業年度の期首からとされています。
本日は、新しい後発事象会計基準のポイントと、企業の実務上の対応について、公認会計士の立場から解説します。
1. 後発事象の定義と「評価期間の末日」
新基準では、後発事象を次のように定義しています。
決算日後に発生した事象のうち、企業の財政状態・経営成績・キャッシュ・フローに影響を及ぼし、評価期間の末日までに発生した事象
ここで重要なのが、評価期間の末日=後発事象を評価する最終日が、原則として「財務諸表の公表の承認日」とされた点です。
従来は、監査報告書日を基準とする整理が一般的でしたが、今回の基準ではIFRSと同様に「財務諸表を公表することを会社として最終決定した日」を基準にする考え方へと見直されています。
この変更により、
決算作業・監査手続
取締役会・株主総会等での承認プロセス
と、後発事象の評価期間との関係を、改めて整理しておく必要があります。
2. 会計監査人設置会社では「確認日」が基準に
会計監査人設置会社(いわゆる監査法人監査の対象会社)については、評価期間の末日が特例的に「確認日」と定義されています。ここでいう確認日とは、
企業が、一般に公正妥当と認められる会計基準および会社計算規則に準拠して計算書類(連結計算書類を含む)を作成する、監査契約上の責任を果たしたことを確認した日
を指し、通常は経営者確認書の日付と同一日とされています。
さらに、会計監査人設置会社では、次のような事象を修正後発事象であっても「開示後発事象」として注記する取扱いが導入されます。
計算書類の確認日後から、個別財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象
連結計算書類の確認日後から、連結財務諸表の公表の承認日までに発生した修正後発事象
つまり、確認日以降に発生した重要な事象については、数値修正ではなく、注記による情報提供が求められる場合がある、ということになります。
なお、従来の実務指針にあった「個別と連結の監査報告書日がずれる場合の特別な取扱い」は、現在は監査報告書日が同一であることが基本となっている実務を踏まえ削除されています。
3. 新たに求められる注記の内容
今回の基準では、後発事象に関して新しい注記事項が定められています。
(1)財務諸表の公表の承認に関する注記
すべての期末財務諸表について、次の事項の注記が求められます。
財務諸表の公表の承認日
財務諸表の公表を承認した機関または個人の名称
例:取締役会、監査等委員会、代表取締役 など
これにより、利用者は「いつ・どの機関が財務諸表の公表を決定したのか」を明確に把握することができます。
(2)重要な開示後発事象に関する注記
重要な開示後発事象が存在する場合には、次の内容を注記します。
開示後発事象の内容および影響額
影響額の見積りができない場合には、その旨およびその理由
また、
連結財務諸表と個別財務諸表の注記内容が同じである場合→ 個別財務諸表側では「連結財務諸表の注記と同一である」旨の記載で足りる
四半期など期中財務諸表では、公表の承認日に関する注記(上記(1))は不要とされています。
実務上は、決算短信・有価証券報告書・計算書類との整合も踏まえ、グループ全体で注記方針を統一しておくことが重要です。
4. 補足文書による「後発事象の例」の提示
今回の基準公表とあわせて、ASBJは「開示後発事象の例示及び開示内容の例示について(補足文書)」も公表しています。
これは、廃止された監基報560実務指針に示されていた、
開示が必要となる典型的な後発事象の例
注記の具体的な書き方例
を、参考情報として整理し直したものです。
新基準における判断枠組みは変わっていますが、どのような事象が開示対象となるかを検討するうえでの実務上の手掛かりとして活用できます。
5. 企業が今から準備しておきたいポイント
①「公表の承認日」と承認プロセスの整理
取締役会、監査役会、株主総会など、どの機関がいつ財務諸表の公表を承認しているのか
決算短信・有報・計算書類など、各開示書類とのタイミングの関係
をあらためて整理し、「公表の承認日」を会社として明確化しておく必要があります。
②後発事象の社内報告フローの見直し
決算日後から確認日、承認日までに発生した重要事象について、経理・法務・IRなどから経営陣および会計監査人へ情報が上がるフローを再確認する
特に、確認日以降に発生した修正後発事象かどうかの判断が重要になるため、チェックリストや担当部署を明確にしておく
など、社内ルールの整備が求められます。
③注記例のひな形作成とグループ内統一
公表の承認日に関する注記文例
代表的な開示後発事象の注記フォーマット
をあらかじめ作成し、グループ各社で共通利用できるようにしておくことで、決算実務の効率化と表現の統一を図ることができます。
6. まとめ:後発事象は「タイミングと情報共有」が鍵
ASBJの「後発事象に関する会計基準」は、
後発事象の評価期間を「財務諸表の公表の承認日」までとすること
会計監査人設置会社では「確認日」との二段階構造を明確にしたこと
公表の承認日に関する新たな注記を求めたこと
などにより、決算のタイミング管理と情報共有の重要性を一層高める内容となっています。
適用開始は2027年4月以後開始事業年度と少し先ですが、決算プロセスや社内規程、監査法人とのコミュニケーションの見直しには時間を要することが想定されます。
当事務所では、
新基準を踏まえた決算・開示スケジュールの整理
後発事象に関する社内ルール・チェックリストの作成支援
注記文例の整備とグループ内統一方針の検討
等のご支援も行なっております。
自社の決算実務への影響が気になる場合は、早めにご相談いただくことをお勧めします。


コメント