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未払賞与を当期の損金にするための「落とし穴」

  • yasuda-cpa-office
  • 1 時間前
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


決算賞与(未払賞与)は、うまく活用すれば当期の利益調整に役立つ一方、要件を外すと損金算入が全額否認されるリスクがある取扱いです。


特に注意が必要なのが、「支給額を通知したものの、支給日までに退職した社員に支給しなかった場合」や「支給日に在職者だけに払う前提で通知している場合」です。

本記事では、未払賞与を当期損金とするための基本要件と、退職者への通知をめぐる実務上の注意点を、税理士の視点から整理します。


1.原則:賞与は「支払った期」の損金

法人税では、役員・使用人に支給する賞与は、原則として実際に支払った事業年度の損金とされます。

したがって、決算日に未払計上しただけでは、通常はその期の損金になりません。これがいわゆる「決算賞与」の特例との違いです。


2.決算賞与(未払賞与)が当期損金になる3つの要件

例外的に、一定の要件を満たす未払賞与については、支給額を通知した日の属する事業年度で損金算入することが認められています。

その要件は、次の3つです(法人税法施行令72条の3 二)。


①各人別・かつ同時期に支給を受けるすべての使用人に対し、支給額を通知していること

②その通知額を、通知日の属する事業年度終了日の翌日から1か月以内に、通知したすべての使用人に支払っていること

③その支給額を、通知日の属する事業年度に損金経理していること 

この3条件を満たすことで、「賞与額がその期に確定し、かつ確実に支払われる」とみなされ、支払前であっても損金算入が認められる仕組みです。


3.「支給日に在職者のみ」が条件だと、そもそも要件を外れる

実務で見落とされがちなのが、「支給日に在職している社員にだけ支給する」という条件をつけている決算賞与です。

法人税基本通達では、次のように取り扱われています。

支給日に在職している使用人にのみ賞与を支給することとしている場合の支給額の通知は、上記①の「支給額の通知」に該当しない。

つまり、

  • 通知書に「支給日に在職していることを条件とする」旨を記載

  • 就業規則や賞与規程で「支給日前に退職した者には支給しない」と定めている

といった場合、支給額はまだ確定していないと判断されます。

この場合、

  • 通知通りに全員へ支給したとしても

  • 「支給額を確定的に通知した」

とは扱われません。

したがって、未払賞与としてその期の損金にすることはできず、支払った期の損金になってしまいます。


4.通知後に退職者が出て、実際に支給しなかった場合の扱い

もう一つ注意すべきなのが、「正しく通知を行なったが、その後退職した社員に賞与を支給しなかった」というケースです。


この場合、要件②の「通知したすべての使用人に対し、1か月以内に支払っていること」に抵触します。結果として、

  • 一部の社員に支給しなかっただけでも

  • 通知した賞与の“全額”が、その期の損金にできない

という厳しい取り扱いとなります。

「退職者の分だけ損金否認」ではなく、未払賞与全体が当期損金の要件を満たさなくなる点が重要です。


5.実務で避けるべきパターンと、設計上のポイント

<避けたいNGパターン>

  • 「支給日に在職していること」を条件にしたまま、決算賞与を未払計上している

  • 退職者が出ても、決算賞与の支給額・支給方法の見直しをせずに放置している

  • 規程上は条件付きのまま、運用で「ほぼ全員に払っているから大丈夫」と考えている

これらはいずれも、税務調査で未払賞与の損金算入を否認される典型例となり得ます。


<設計上のポイント>

決算賞与を税務上の未払賞与として活用するのであれば、少なくとも次の点を意識する必要があります。

  • 賞与規程や決算賞与の社内決裁文書から、「支給日に在職していること」を条件とする文言を外す

  • 通知時点で、各人別の支給額を確定させる

  • 通知した全員に、1か月以内に全額支払う運用を徹底する

  • 退職予定者がいる場合には、通知前に支給対象や金額を精査しておく

税務上のメリットを取りに行く以上、制度設計(規程)と実際の運用をきちんと揃えることが不可欠です。


6.まとめ:決算賞与は「要件を満たせば有効」「外せばリスク」

未払賞与(決算賞与)は、

  • 賞与の支給タイミングを工夫することで、

  • 当期の損金として計上できる強力な選択肢

ですが、その分、要件は厳格です。

特に、

  • 「在職者条件付きの通知」は要件①を満たさない

  • 退職者に支給しないと、要件②を満たさず全額否認され得る

という2点は、必ず押さえておく必要があります。


「決算賞与を損金にしたい」「現在の賞与規程で問題がないか不安がある」といった場合には、税務と就業規則(人事制度)の両面から見た検証が重要です。


当事務所では、

  • 決算賞与スキームの検討・シミュレーション

  • 賞与規程・運用の税務面からのチェック

  • 税務調査を見据えた証拠書類(通知書・決裁書等)の整備支援

なども含めてサポートしております。

具体的な制度設計でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。


神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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