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「防衛特別法人税」の中小企業への影響は?

  • yasuda-cpa-office
  • 10月31日
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


1.新たな法人税「防衛特別法人税」とは

令和7年度税制改正により、「防衛特別法人税」が創設されました。これは、国の防衛力強化に必要な財源を確保するために設けられた新たな法人税です。通常の法人税とは別に課税され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


基本的な仕組みは次の通りです。

項目

内容

納税義務者

各事業年度の所得に対して法人税を課されるすべての法人

税率

基準法人税額(控除前の法人税額)から年500万円を控除した額の4%

基礎控除

年500万円(小規模企業への配慮)

申告・納付

法人税と同様(確定申告は期末翌日から2か月以内)

適用開始

令和8年4月1日以後開始事業年度

つまり、法人税の納税額から500万円を差し引いた残りに4%を掛けた金額が防衛特別法人税として課されます。このため、基準法人税額が500万円以下の企業では税負担は発生しません。


2.中小企業に配慮した「年500万円の基礎控除」

基礎控除の仕組みにより、利益規模が小さい企業には実質的な負担が発生しないよう設計されています。

例:中小法人(軽減税率適用あり)の場合

  • 所得金額約2,438万円 → 法人税約500万円 → 防衛特別法人税=0円

例:大法人(軽減税率なし)の場合

  • 所得金額約2,155万円 → 法人税約500万円 → 防衛特別法人税=0円

このように、年間所得が2,000万円程度までの法人では、新税の負担が発生しないケースが多いと考えられます。


3.計算・申告のイメージと実務対

防衛特別法人税は、計算・申告の仕組みが既存の地方法人税と非常に似ています。令和7年5月に公表された新様式では、法人税・地方法人税・防衛特別法人税を一体で申告できるようになっており、申告書の別表1がこれまでの2枚構成から3枚構成に変更されています(2枚目が防衛特別法人税用)。


主な特徴

  • 中間申告・確定申告とも法人税と同じ手続き

  • 損金不算入(法人税と同様に別表4で加算調整)

  • グループ通算制度適用時には、基礎控除500万円をグループ全体で按分

グループ通算制度を採用している企業では、各法人の法人税額比で基礎控除を配分します。たとえば、親法人の法人税額が900万円、子法人が600万円なら、9:6の割合で500万円を配分します。


4.外国税額控除・法定実効税率への影響

法人税・地方法人税で外国税額控除を適用しても控除しきれない場合は、防衛特別法人税からも控除可能です。控除順序は「法人税 → 地方法人税 → 防衛特別法人税」となります。

また、防衛特別法人税は法定実効税率にも影響します。たとえば東京都の外形標準課税適用法人の場合、現行の法定実効税率は30.62%ですが、防衛特別法人税を加味すると31.52%に上昇します。


5.まとめと実務上の留意点

  • 防衛特別法人税は法人税額の4%(年500万円控除あり)

  • 令和8年4月以降開始事業年度から適用

  • 小規模企業(法人税額500万円以下)は実質負担なし

  • 申告・納付は法人税と一体で行う

  • 税効果会計を適用する場合は法定実効税率の見直しが必要


税理士からのコメント

「防衛特別法人税」は新設税であるため、初年度は申告システムや税効果会計処理に混乱が生じる可能性があります。特にグループ通算制度を採用している企業では、基礎控除の配分や外国税額控除の順序に注意が必要です。


また、法人税額が500万円を超える中堅企業では、実効税率の上昇による税負担増が見込まれます。今後の事業計画や中期税務シミュレーションでは、防衛特別法人税を加味した見直しが求められるでしょう。




神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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