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賃上げ税制が廃止されても給与等支給額の計算は必要?大企業の実務対応を税理士が解説

  • yasuda-cpa-office
  • 1 時間前
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、大企業向けの賃上げ促進税制について大きな見直しが行われます。具体的には、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、大企業向けの措置が廃止されることになりました。これにより、大企業では「もう賃上げ税制の計算は不要になる」と考えたくなるかもしれません。


しかし、実務はそれほど単純ではありません。

賃上げ促進税制そのものは使えなくなっても、継続雇用者給与等支給額の計算は、他の税制を適用する場面で引き続き必要になるケースがあります。つまり、「賃上げ税制が廃止された=給与等支給額の検証も不要」とは言えないのです。


今回は、令和8年度改正における賃上げ税制の廃止と、その後も残る給与等支給額計算の実務について、税理士の視点から整理して解説します。


大企業向け賃上げ促進税制はどう変わるのか

資料によると、令和8年度改正により、令和8年4月1日以後開始事業年度から、大企業向けの賃上げ促進税制が廃止されます。


ここでいう大企業向け措置の廃止は、単に税額控除の縮小ではなく、制度自体が適用できなくなるという意味合いを持ちます。そのため、従来のように「継続雇用者給与等支給額が前期より何%増えたか」を賃上げ税制の適用要件として判定する場面は、大企業についてはなくなります。


とはいえ、ここで安心して社内の計算体制を止めてしまうと、別の税制で思わぬ支障が出る可能性があります。


継続雇用者給与等支給額とは何か

資料では、継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者に対する給与等の支給額をいうとされています。そして、継続雇用者とは、適用事業年度および前事業年度の期間内の各月分の給与等の支給を受けた国内雇用者を指します。


この金額を計算するには、単に年間給与総額を見るだけでは足りません。資料でも、継続雇用者の抽出や給与等支給額の集計が必要になるとされており、実務的には相応の手間がかかる計算項目です。


つまり、制度の適用可否を判断するには、人事データと給与データをきちんと連動させて把握できる体制が前提になります。


なぜ賃上げ税制廃止後も計算が必要なのか

今回の改正で重要なのは、特定税額控除規定の不適用措置が強化される点です。資料によると、令和8年度改正では、地域未来投資促進税制やカーボンニュートラル投資促進税制の適用にあたって、改正前は次のいずれかを満たせばよかったとされています。

  • 継続雇用者給与等支給額を一定程度増加させること

  • 国内設備投資を積極的に行なうこと

ところが、改正後は、これが「どちらか一方」ではなく「両方」必要になります。


つまり、設備投資要件だけ満たしていても足りず、継続雇用者給与等支給額の増加要件も同時に満たしているかどうかを確認しなければならないのです。


対象となる税制は何か

資料で具体的に挙げられているのは、次の税制です。

  • 地域未来投資促進税制

  • カーボンニュートラル投資促進税制

  • 戦略分野国内生産促進税制

  • 特定生産性向上設備等投資促進税制(いわゆる大胆な設備投資促進税制)


さらに、資料では、これらを適用しようとする大企業については、賃上げ促進税制廃止後であっても、要件判定のために継続雇用者給与等支給額を引き続き計算する必要があると整理されています。


つまり、賃上げ税制の名目ではなくても、投資促進税制の入口要件として給与増加の確認が残るということです。


実務で起きやすい誤解

この改正で特に起きやすい誤解は、次のようなものです。


1. 賃上げ税制が廃止されたから給与増加率の検証も不要になる

実際には、他の税制の適用要件として引き続き必要な場面があります。


2. 設備投資をしていれば投資促進税制は使える

改正後は、一定の税制について設備投資要件だけでなく給与増加要件も同時に必要になります。


3. 人事・給与データの整理は後回しでよい

継続雇用者の抽出や給与集計には時間がかかるため、決算・申告直前では対応しにくいことがあります。


特に大企業で気をつけたいポイント

大企業では、設備投資関連の税制を複数検討することが多いため、今回の改正は申告実務に大きく影響します。資料の内容からすると、今後は「賃上げ税制の適用可否」だけを見ればよいのではなく、各投資促進税制における不適用措置の要件判定まで含めて整理する必要があります。


そのため、税務部門だけでなく、人事部門、経理部門、設備投資担当部門の間で、少なくとも次の情報を連携できる体制が望まれます。

  • 継続雇用者の範囲

  • 前期・当期の給与等支給額

  • 国内設備投資額

  • 適用を予定している税額控除制度の種類

税制の適用判断が、もはや税務部門だけで完結しない点は、今後ますます重要になります。


税理士として顧問先に伝えたいこと

顧問先が大企業またはそのグループ会社である場合、今回の改正では「賃上げ税制がなくなった」ことだけを伝えるのでは不十分です。むしろ重要なのは、賃上げ税制の廃止後も、継続雇用者給与等支給額の計算実務が残る可能性があることを早めに共有することです。


特に、地域未来投資促進税制やカーボンニュートラル投資促進税制などを検討している会社には、「設備投資要件だけではなく、給与増加要件も必要になる」という点を事前に説明しておくことで、決算期直前の混乱を防ぎやすくなります。


実務対応として今のうちにすべきこと

今回の改正を踏まえると、大企業では次のような準備を進めておくと安心です。

まず、自社が適用を検討している税制の棚卸しを行うことです。次に、それらの税制に継続雇用者給与等支給額の判定が必要かを確認します。そのうえで、人事・給与システム上、継続雇用者の抽出と給与集計が継続して可能かを見直す必要があります。


賃上げ税制だけを前提に作っていた集計フローがある場合は、今後はその目的を変更して残すべきか、社内で検討しておくとよいでしょう。


まとめ

令和8年度改正では、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、大企業向け賃上げ促進税制が廃止されます。しかし、継続雇用者給与等支給額の計算実務まで不要になるわけではありません。資料によると、地域未来投資促進税制、カーボンニュートラル投資促進税制、戦略分野国内生産促進税制、特定生産性向上設備等投資促進税制を適用しようとする大企業では、改正後は給与増加要件と国内設備投資要件の両方を満たす必要があり、その判定のために継続雇用者給与等支給額を引き続き計算しなければならないとされています。


つまり、大企業にとっては、賃上げ税制の廃止は「給与関連の税務計算がなくなる」ことを意味しません。他の投資促進税制を見据えた給与等支給額の把握が、今後も重要な実務対応として残ることになります。



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