税務調査における上場株式の評価損
- yasuda-cpa-office
- 2 日前
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おはようございます!代表の安田です。
近年の税務調査では、上場株式(上場有価証券)の評価損の計上が改めて確認されるケースが増えています。
特に注目されているのが、令和2年頃のコロナ禍に計上された評価損です。
当時は株価が急落したことから、「50%以上下落した=評価損を計上できる」と理解して処理した企業も少なくありません。
しかし税務調査の現場では、「回復可能性の判断が合理的とは言えない」として、評価損の損金算入が否認される事例が出ています。
1.税務上、上場株式の評価損が認められる要件
法人税法上、上場有価証券の評価損が損金算入できるのは、次の2つの要件を同時に満たす場合です。
① 期末時価が帳簿価額のおおむね50%以下に下落していること
② 近い将来、その価額の回復が見込まれないこと
(法法33②、法令68①二イ、法基通9-1-7)
実務では①の「50%基準」ばかりが注目されがちですが、税務上、より重要なのは②の「回復可能性」です。
2.「会計で減損=税務でもOK」という誤解に注意
会計上は、有価証券の時価が50%以上下落した場合、合理的な反証がない限り、減損処理(評価損計上)が必要とされています(金融商品実務指針91)。
そのため、
会計監査を受けて減損処理をした
監査法人のチェックも通っている
→ 税務でも当然に評価損を計上できると考えてしまうケースがあります。
しかし、税務調査では、「会計上の減損処理を行った」という事実だけでは不十分と判断されることがある点に注意が必要です。
3.税務が求めるのは「回復可能性の判断基準」
国税庁の「上場有価証券の評価損に関するQ&A」では、回復可能性がないことについて、法人が用いた合理的な判断基準が示される限り、その基準は尊重されるとされています。
また、会計監査を受ける法人については、
株価の回復可能性に関する 一定の形式基準 を策定
その基準について 監査法人の合理性チェックを受け
それを 継続的に使用している
場合には、税務上も合理的な判断として認められやすいとされています。
4.否認リスクが高まる典型的なケース
記事では、次のような実務が問題になりやすいと指摘されています。
株価が50%以上下落したため、機械的に減損処理
回復可能性についての社内基準や検討資料が存在しない
「会計監査を受けているから大丈夫」と説明している
このような場合、税務調査で「回復可能性の検討が不十分」「判断が不合理」とされ、評価損が否認される可能性があります。
なお、回復可能性の判断は事業年度末時点で行なう必要があり、その後の株価回復・下落といった事後事情は考慮されません。
5.税理士の視点:評価損を巡る税務リスクを下げるために
上場株式の評価損については、「税務と会計は基本的に一致する」と思われがちですが、回復可能性の判断プロセスを省略すると税務リスクが顕在化します。
実務上、特に重要なのは次の点です。
回復可能性に関する「判断基準」を明確に定める
例:業績見通し、事業環境、業界動向、財務指標など
判断基準を文書化し、毎期継続的に使用
後付けではなく、期末時点の判断として残すことが重要
会計の減損基準と同一にする場合も、その前提を明確化
「同一基準を用いる」こと自体が目的化しないよう注意
コロナ禍など過去年度の処理も再点検
調査で説明できる資料が残っているかを確認
まとめ
上場株式の評価損は、50%下落=自動的に損金算入できるわけではありません。
税務上は、「回復可能性がない」と判断した合理的根拠が明確に説明できるかどうかが最大のポイントです。
特に、会計監査を受けている法人ほど「基準を作っているつもりで作っていない」ケースが見受けられます。
当事務所では、
上場株式・有価証券の評価損の税務検討
税務調査対応(評価損・減損論点)
会計と税務の差異整理
などについてもサポートしております。
気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。


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