東証が「上場子会社等」に少数株主の賛否割合の開示を義務付けへ
- yasuda-cpa-office
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おはようございます!代表の安田です。
東京証券取引所(東証)は2026年1月26日、「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会(第2期)」第9回会議で、議決権保有比率40%以上の大株主を有する上場会社に対し、取締役選任議案における少数株主の賛否割合等の開示を義務付ける上場規程等の改正案を示しました。
ねらいは、上場子会社等で少数株主の反対票が一定程度ある場合に、その情報に基づく対話を促し、少数株主保護を実効化することです。
本記事では、会計事務所に所属する公認会計士の視点から、改正案の要点と、企業実務(開示・ガバナンス・株主対応)で準備すべきポイントを整理します(文章・構成はオリジナルです)。
1. 何が義務化される?「少数株主の賛否割合」を総会後速やかに開示
対象は、議決権保有比率40%以上の大株主を有する上場会社で、取締役選任議案(会社提案に限る)について、株主総会後、少数株主の賛否割合や「少数株主の範囲」を速やかに開示することが求められます。
背景として、研究会では「少数株主の賛否を通じて客観的に懸念が示された場合、可決されたからといって無視すべきではない」といった議論があり、賛否情報を“対話の起点”にするという考え方が明確です。
2. 反対が50%超なら“その後のアクション開示”までセットに
さらに踏み込んで、少数株主の反対票が50%超となった取締役選任議案については、次の開示が求められる方向です。
総会後速やかに:取締役会による「反対理由・原因の把握のための株主との対話方針」の開示
総会後6か月以内:株主からのフィードバック、追加対応の必要性、取組方針等の開示
つまり「反対が多かった事実を出す」だけでなく、“どう受け止め、どう対話し、どう改善するか”まで説明責任が求められる設計です。
3. 影響範囲:対象会社は「500社弱」—上場子会社だけの話ではない
東証によると、40%以上の大株主を有する上場会社は500社弱とされています。
上場子会社(親会社が大株主)を念頭にした議論ではありますが、要件の書き方としては「大株主40%以上」を基準にしているため、“親子上場”に限らず該当する可能性がある点が実務上重要です。
なお、上場子会社における2024年7月~2025年6月の株主総会の取締役選任議案(会社提案)で、親会社以外の反対割合が50%超の議案は全体の約2%(該当企業17社)とされています。比率としては小さく見えますが、「該当した場合の対応負荷(対話・開示・改善)」は大きいため、事前準備の重要性が高い領域です。
4. 付随論点:独立性基準の見直しも同時に進む
今回、東証は独立役員の独立性基準の拡充も示しています。主な方向性は次のとおりです。
これまで独立性が認められていた「主要株主の業務執行者」等について、独立性を認めない方向へ
「政策保有の関係」にある先の業務執行者について、一定期間(過去10年以内)に該当する場合、会社との関係概要の開示を求める
少数株主保護の議論は、取締役選任の賛否だけでなく、独立役員の“独立性の実効性”にもつながっていく流れです。
5. スケジュール:2026年12月以後に終了する事業年度の定時株主総会から適用予定
東証は、今年春を目途に制度要綱を公表し、パブリックコメントを経たうえで、2026年12月以後に終了する事業年度に係る定時株主総会から適用する予定としています。
3月決算企業であれば、形式的には「2027年6月総会」からの適用が視野に入る可能性があり、ガバナンス・IR・法務・総務は早めの準備が必要です(※最終決定は規程改正の確定内容に依存)。
6. 企業が今から準備すべきこと(実務チェックリスト)
(1)自社が対象になり得るかを把握
大株主の議決権比率が40%以上か
対象となる議案(会社提案の取締役選任)と、少数株主の定義の整理
(2)賛否データの収集・分析プロセスの整備
反対割合の算定方法と集計タイムライン(総会後“速やかに”対応できる体制)
反対が高い場合に備えた“原因仮説”の準備(指名理由、独立性、兼任、報酬、ガバナンス懸念等)
(3)反対50%超の「対話→開示」までの社内フロー設計
取締役会での検討アジェンダ化
対話(エンゲージメント)担当の明確化(IR/総務/法務)
6か月以内のフィードバック収集と、追加対応の意思決定プロセス
開示文面の標準化(炎上リスクの低い説明)
まとめ:親子上場をめぐる“対話の透明化”が一段進む
東証は、40%以上の大株主を有する上場会社に対し、取締役選任議案における少数株主の賛否割合の開示を義務付け、反対が50%超の場合は対話方針やその後の対応まで開示を求める方向を示しました。
形式的な開示にとどまらず、「反対が示す懸念をどう受け止めるか」という、ガバナンスの実効性が問われるテーマです。上場子会社等では、指名・報酬・独立性の説明力が企業価値に直結する局面が増えると考えられます。


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