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配当基準日と総会前開示の関係

  • yasuda-cpa-office
  • 12 分前
  • 読了時間: 2分

おはようございます!代表の安田です。


今回は、上場会社の開示スケジュールと法的留意点について解説します。


1.背景:有価証券報告書の「総会3週間前開示」への対応

近年、有価証券報告書(有報)を株主総会の3週間以上前に開示することが求められる流れが強まっています。この開示の早期化を実現するための一つの方法として、株主総会自体を後ろ倒しする(開催日を遅らせる)という選択肢があります。


しかし、総会を後ろ倒しすると、次のような問題が生じます。

  • 議決権基準日から3か月以内に総会を開催しなければならない(会社法124条2項)

  • 配当も基準日から3か月以内に総会決議を行なう必要がある(同法454条1項)

したがって、総会の開催を遅らせる場合には、議決権基準日と配当基準日のいずれか、あるいは両方を変更しなければならないケースが出てきます。


2.議決権基準日と配当基準日は「必ずしも同日」でなくてよい

実は、議決権基準日と配当基準日を必ずしも一致させる必要はありません。

会社法459条1項に基づき、「株主への配当を取締役会の決議によって定める旨」を定款に定めることで、配当基準日を期末日のままとしつつ、議決権基準日のみを変更することが可能です。

この方法を採用すれば、総会の日程を柔軟に設定しつつ、有報の早期開示にも対応しやすくなります。。


3.実務上の留意点

もっとも、議決権基準日と配当基準日を分ける運用には、いくつかの注意点があります。

  • 株主名簿の確定作業が2回発生

    配当基準日(決算期末)と議決権基準日(総会基準日)の双方で株主名簿を確定する必要があるため、事務コストが増加します。

  • 株主・投資家への丁寧な説明が必要

    従来の慣行と異なるため、総会招集通知やIR情報での明確な説明が求められます

  • 定款変更の手続き

    取締役会決議による配当を可能とするには、定款に明記する必要があり、株主総会での定款変更決議が必要です。


4.まとめ:開示早期化と実務負担のバランスを

有報の開示早期化は、投資家保護やガバナンス強化の観点から不可避の流れです。しかし、議決権基準日や配当基準日の設定変更には、事務負担・コスト・株主対応といった副作用も伴います。

今後、上場企業においては「開示の迅速化」と「実務の効率化」を両立するために、定款変更による柔軟な対応がますます重要となるでしょう。




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