新リース会計基準適用後の「取得価額」のズレに注意
- yasuda-cpa-office
- 1 日前
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おはようございます!代表の安田です。
本日は信リース基準適用後の会計と税務のズレについてのお話です。
1.新リース会計の導入で「使用権資産」が登場
2025年度から適用が始まった新リース会計基準では、借手側(リース利用者)は、原則として全てのリース取引について「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上することになりました。
つまり、従来はオフバランスだった所有権移転外リース取引も、バランスシートに「資産」と「負債」が並ぶ形になります。
この会計上の「使用権資産」は、税務上も減価償却資産として扱われそうに見えますが、実は法人税法上では別の取扱いが定められています。
2.税務上は「リース資産」で処理 ― 会計との定義が異なる
法人税法上、リース資産は依然として「所有権移転外リース取引における原資産」として扱われます。つまり、税務上の減価償却は、従来どおり「リース期間定額法」によって計算します。
このとき基礎となるのが「リース資産の取得価額」ですが、その内容が会計上の「使用権資産の取得価額」と完全には一致しません。
国税庁の通達改正(法基通7-6の2-9)により、原則としてリース期間中のリース料総額から利息相当額を除いた金額が「リース資産の取得価額」とされることが明確化されました。
ただし、資産除去債務や借地権の設定に伴う権利金など、一部の費用は除外される点がポイントです。
3.会計上は「資産除去債務」も含めるが、税務上は除外
新リース会計基準では、使用権資産の取得価額に以下の要素が含まれます。
現在価値で算定したリース負債
前払リース料(開始日前に支払済の分)
リース開始時に発生する付随費用
資産除去債務に対応する除去費用
借地権設定に伴う権利金等の対価
(控除)受け取ったリースインセンティブ
これらを加減して「使用権資産の取得価額」が決まります。
一方、税務では次のような費用はリース資産に含めません。
区分 | 会計上の取扱い | 税務上の取扱い |
借地権の設定に係る権利金等 | 含める | 含めない |
資産除去債務対応費用 | 含める | 含めない |
リース料(利息相当額控除後) | 含める | 含める |
したがって、会計上は使用権資産の取得価額にこれらの費用が加算されるのに対し、税務上はリース資産から除外されるため、償却額に差異(償却超過額)が生じる可能性があります新リース リース資産の取得価額から除かれる一定の費用と申告調整…。
4.申告調整が必要となるケース
<申告調整が必要になる例>
会計上は資産除去債務を含めて使用権資産を計上
税務上は除外してリース資産を計上→ 会計上の減価償却費が税務上の限度額を超過する
この場合、超過分は別表四で加算調整(申告調整)が必要です。
<申告調整不要な例>
一般的な設備リース(オフィス機器・車両など)→ 使用権資産とリース資産の取得価額が一致→ 会計と税務で償却費が同額となり、調整不要
つまり、土地・建物など資産除去債務が発生するリースを扱う場合に慎重な確認が必要です。
5.使用権資産とリース資産の違い
使用権資産とリース資産の取得価額の構成要素を比較すると...
会計上の使用権資産には「資産除去債務」「権利金」などが加算
税務上のリース資産にはこれらを含めない
したがって、減価償却費の算定基礎がズレることを明示
この差異こそが、税務上の申告調整の要否を分けるポイントです。
6.税理士からのコメント
新リース会計基準の導入により、会計と税務の間で「リース資産の金額」が食い違う場面が増えています。特に、借地付き建物リースや設備の撤去費用が見込まれる契約では、会計上は資産除去債務を含める一方、税務では除外するため、減価償却費の差額調整(申告調整)が不可避です。
実務では、次の点を意識して対応しましょう。
会計上の「使用権資産内訳」を税務申告用に再分類
「除外費用(権利金・除去債務)」の金額を明示的に区分
税務調整表(別表四・五)で一貫した処理を行なう
リース取引は契約期間が長期にわたることも多いため、初年度に適正な区分を行なうことが将来の税務リスク回避につながります。


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