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少額リースをどう判断する?

  • yasuda-cpa-office
  • 47 分前
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


2027年4月1日以後開始事業年度から強制適用となる新リース会計基準では、原則すべてのリースをオンバランス処理する一方、「少額リース」に該当する場合は、使用権資産・リース負債の計上を免除できます。


この少額リースは、

  • 財務指標への影響を抑えられる

  • 事務負担が軽減される

といったメリットがある一方、金額基準の判定方法が複雑で実務上の疑問が多い点も特徴です。本日は、公認会計士の視点から、記事内容を踏まえて企業が押さえるべき重要ポイントを分かりやすくまとめます。


1.少額リースの基準は大きく2パターン

(1)重要性に基づく基準額(減価償却資産の基準を準用)

(2)①事業内容に照らした重要性基準 ②原資産価値基準

新リース会計基準の適用指針22項では、この2区分が示されています。


【パターン(1)】

● 企業が減価償却資産の購入時に費用処理している「基準額」以下のリース

また、この基準額は利息相当分を加味して多少引き上げてよいとされています。


【パターン(2)】①

● 「リース契約1件あたりの金額」が重要性の乏しい水準であるもの

→ 300万円基準を踏襲する運用が一般的


新基準では具体的金額は明記されていませんが、結論の背景(BC43)に旧基準の300万円を踏襲する趣旨が記載されており、監査実務でも300万円基準を用いるのが通常とされています。


【パターン(2)】②

● 新品時の原資産価値が少額(IFRS16号の基準=5,000米ドルが参考)

こちらは原資産価値に着目するIFRS由来のアプローチです。


2.300万円基準の“算定対象”には何を含める?

不動産リースの場合、敷金・礼金・更新料も含まれる可能性


従来の日本基準では機器リースに多く用いられた300万円基準ですが、新基準では不動産を含む全リースが対象となり、判定の難易度が上がっています。

特に不動産の少額リース判定について次の整理が示されています。


✔ 判定に含める金額

  • 賃料

  • 将来返還されない敷金

  • 礼金・更新料 → いずれも「リース料の前払い」とみなされる可能性があり、その場合は含める


✔ 判定から除外できる可能性があるもの

  • 共益費(サービスに該当する場合)


この点は企業実務で混乱が生じやすいため、契約書の内訳明細を丁寧に確認することが重要です。


3.判定に用いる“対象期間”にも選択肢がある

― 借手のリース期間 or 契約期間のいずれでも可

基本は借手のリース期間で金額判定しますが、実務負担軽減のため 「契約期間」を基礎とすることも可能です。


社宅リース:契約期間2年、延長オプション込みの実質リース期間4年→ 2年間の金額で判定してOK

企業側にとって柔軟な運用が可能ですが、会計方針として首尾一貫して適用する必要がある点に注意が必要です。


4.契約更新時は“再判定”が必要

― 更新後に300万円を超えるならオンバランス処理へ

少額リースの判定は 「リース開始日」で行なうため、契約更新時は新しい契約として扱い、再度判定が必要となります。


✔ 例

  • 初回契約:少額リース

  • 更新後、家賃が増額 → 判定額300万円超へ→ 更新契約開始日からオンバランス処理(使用権資産・リース負債を計上)

新基準では少額リースの注記が不要ですが、オンバランスへ切り替わる可能性のある契約は管理対象として別途把握しておく必要があります。


5.「300万円超の自社基準を設定したい」 ― これは可能か?

→ 監査実務では“不可”が基本的な考え方

企業規模に応じて、「300万円は低すぎるので1,000万円にしたい」という要望が出てくる可能性があります。

しかし、監査人サイドの一般的見解は以下のとおり:

❌ 300万円超の基準を設定するのは、新リース会計基準に準拠しないと考える

 → 会計基準逸脱として監査意見に影響する可能性あり。


ただし、企業会計原則の「重要性」観点から、例外的に監査上許容できるケースもあるとされています。


ただしその場合も:

  • 毎期差異を集計し影響を検証

  • ある期で業績が悪化すれば許容できなくなる

  • 結果としてオンバランスへ切替が必要になる可能性

など、運用負担が大きく実務上のリスクも残ります。


公認会計士の視点:少額リース判定の3つの重要ポイント

✔ ① 300万円基準を“形式的に踏襲”するのが安全

会計基準・監査実務の両面で最も安定。


✔ ② 不動産リースでは敷金・礼金・更新料の取り扱いに特に注意

契約書の読み違いで判定誤りが生じやすい領域。


✔ ③ 更新時の再判定プロセスを社内フローに明記

経理部門と総務・調達部門の連携が必須。


まとめ

新リース会計基準における「少額リース」は、柔軟に見えて実務運用が難しい領域です。

企業としては、

  • 300万円基準の正確な理解

  • 不動産リースの金額範囲の明確化

  • 更新時の再判定ルールの整備

を早期に行なっておくことが不可欠です。


当事務所では、新リース会計基準導入に向けた会計方針策定・システム対応・社内管理ルール整備などの支援を行なっています。ご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。




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