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国税庁「令和6年度分会社標本調査」から読む日本企業の実態|黒字法人は3年連続で過去最大

  • yasuda-cpa-office
  • 3 時間前
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


国税庁は毎年、国内の法人企業の実態を把握するために「会社標本調査」を公表しています。この調査は、法人税申告書をもとに、法人数、黒字法人の割合、所得金額、交際費、寄附金などの動向を確認できる重要な統計資料です。税理士実務においても、顧問先への説明や経営環境の把握に役立つデータとして注目されています。


今回公表された令和6年度分の会社標本調査では、全法人数、利益計上法人数、営業収入金額、所得金額など、複数の項目で過去最高水準が確認されました。資料によると、対象となったのは、令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に終了した各事業年度について、令和7年7月31日までに申告のあった内国普通法人のうち約242万社です。その結果、全法人数は約300万社となり12年連続で増加、利益計上法人数は約119万社で3年連続の過去最大、黒字法人割合は39.7%となりました。


今回は、この調査結果のうち、実務上特に参考になるポイントを税理士の視点で整理してみます。


会社標本調査とは何か

会社標本調査は、国内法人の申告状況をもとに、企業活動の実態を把握するための統計です。単なる法人税の集計ではなく、資本金階級別や業種別に企業の実情を確認できるのが特徴です。資料でも、国税庁がこの調査を通じて、国内の法人企業を対象に資本金階級別や業種別の実態を明らかにしていると説明しています。


そのため、個別の会社の数値を見るだけでは分からない「世の中全体ではどう動いているか」を確認する資料として、非常に有用です。


全法人数は約300万社で12年連続増加

まず注目したいのは、法人の総数が引き続き増加している点です。資料によると、令和6年度分の法人数は、利益計上法人数119万1,755社と欠損法人数180万7,925社を合わせて、299万9,680社となりました。前年から1.5%増で、全体の法人数は過去最大となっています。


法人設立の増加や、個人事業から法人化する動きが引き続き続いていることを背景に、法人全体の母数が大きくなっていることが読み取れます。


黒字法人は約119万社、割合は39.7%

今回の調査で特に目を引くのが、利益計上法人数の増加です。資料では、利益計上法人数が119万1,755社となり、前年より3.3%増、3年連続で過去最大を更新したとされています。また、全法人数に占める黒字法人の割合は39.7%でした。


裏返せば、欠損法人割合は60.3%です。つまり、法人全体でみると依然として赤字法人のほうが多いものの、黒字法人の数と割合は改善傾向にあるといえます。


顧問先から「世の中の会社はどれくらい利益が出ているのか」と聞かれることがありますが、この調査からは、4割弱が黒字、6割強が欠損という全体像を確認できます。


営業収入金額と所得金額はともに過去最高

企業活動の活発さを示すデータとして、営業収入金額と所得金額も重要です。資料によると、営業収入金額は1,822兆9,016億円で前年より3.6%増、4年連続で増加しました。さらに、所得金額は102兆609億円で前年より11.2%増となり、5年連続の増加で、営業収入金額・所得金額ともに過去最高とされています。


売上だけでなく、所得の伸びが大きい点は、企業収益の改善傾向を示す材料として注目できます。経営環境の厳しさが語られる場面も多い一方で、統計上は全体として利益水準が上がっていることが分かります。


通算法人数も増加

グループ通算制度を利用する法人の数も増えています。資料では、通算親法人2,007社、通算子法人1万6,044社で、合計1万8,051社となり、いずれも前年より増加したとされています。

グループ経営の再編や税務戦略の一環として、通算制度の活用が一定程度広がっている様子がうかがえます。大企業グループを中心に、今後も制度の運用実務が重要になる場面は多そうです。


所得税額控除は約50%減

今回の調査結果で大きな変動が見られた項目の一つが、所得税額控除です。資料によると、所得税額控除は1兆9,274億円で、前年から1兆9,545億円減、率にして50.3%減となりました。


この減少の背景として、資料では、令和4年度改正による完全子法人株式等に係る配当等について源泉徴収を不要とする制度が、今回の調査期間全体にわたって適用されていたことなどが要因として考えられると説明しています。


税制改正が統計数値に大きく影響する典型例といえ、制度改正の効果を間接的に確認できるデータでもあります。


交際費等支出額は3年連続で増加

交際費の動向も実務上参考になります。資料によると、交際費等支出額は4兆4,139億円で前年より5.5%増、3年連続で増加しました。さらに、損金不算入額は1兆1,446億円、損金不算入割合は25.9%とされています。


資料では、今回の調査が交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準引上げ後初の調査であることにも触れられています。飲食需要の回復や営業活動の再開も含め、企業の対外活動が活発化している流れを反映している可能性があります。


寄附金支出額は5年ぶりに減少

一方で、寄附金支出額は減少しています。資料によると、企業版ふるさと納税を含む指定寄附金等は1,688億円で12.2%増でしたが、その他の寄附金は8,946億円で20.4%減となり、全体の寄附金支出額は1兆1,618億円、前年より15.2%減で、5年ぶりの減少とされています。ページ2〜3の比較表でもこの流れが示されています。


指定寄附金等は増えている一方で、完全子法人への寄附を含む「その他の寄附金」が大きく減っている点は、グループ内取引や資金移動の動向を考えるうえでも興味深いところです。


業種別ではサービス業の交際費が大きい

業種別の動向も資料の見どころです。ページ3〜4の業種別表によると、交際費等支出額が最も大きいのはサービス業の1兆1,953億円で、次いで建設業の9,318億円、卸売業の4,047億円、不動産業の3,465億円などとなっています。 


また、1社当たりで見ると、業種ごとに交際費や寄附金の水準に差があることも分かります。顧問先から「うちの交際費は多いのか」と相談を受ける場面では、このような統計を参考に、業種平均との差をざっくり把握するのも有効です。


この調査結果を実務でどう活かすか

会社標本調査は、直接申告書を作るための資料ではありません。しかし、次のような場面では非常に役立ちます。

  • 顧問先への景況感の説明

  • 法人化・経営改善の相談時の参考資料

  • 黒字化の位置づけや一般的な法人の収益状況の説明

  • 交際費や寄附金の水準感の把握

特に、経営者にとっては「自社だけではなく、世の中全体でどう動いているか」を知ることに意味があります。統計資料をうまく使うことで、税理士としての助言にも説得力が増します。


まとめ

国税庁が公表した令和6年度分会社標本調査によると、全法人数は299万9,680社で12年連続の増加、利益計上法人数は119万1,755社で3年連続の過去最大、黒字法人割合は39.7%となりました。さらに、営業収入金額は1,822兆9,016億円、所得金額は102兆609億円で、いずれも過去最高です。一方で、所得税額控除は1兆9,274億円で前年比50.3%減、交際費等支出額は4兆4,139億円で3年連続増加、寄附金支出額は1兆1,618億円で5年ぶりに減少という動きも確認できます。


会社標本調査は、法人税実務の背景を理解するうえで非常に有益な資料です。申告書作成そのものに直結しなくても、企業全体の動向を把握し、経営に活かせる統計として、毎年チェックしておく価値があるでしょう。




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