令和8年度税制改正(個人所得課税)のポイント
- yasuda-cpa-office
- 10 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
令和8年度税制改正大綱では、個人の所得税に関する見直しが大きく打ち出されました。物価上昇への対応や働き方の多様化を踏まえ、
基礎控除・給与所得控除の引上げ
扶養親族等の所得要件の見直し
住宅ローン控除の延長・再設計
青色申告特別控除の拡充
などが盛り込まれています。
以下では、事務所ホームページ向けに、家計・個人事業主・給与計算実務に影響の大きいポイントを絞って解説します。
1. 基礎控除が最大104万円へ引き上げ
まず押さえておきたいのが「基礎控除」の拡充です。
1-1. 本則額の引上げと物価連動の仕組み
合計所得金額 2,350万円以下の方の基礎控除本則額が58万円 → 62万円へ引き上げられます。
直近2年間の消費者物価指数の動きを反映し、2年ごとに自動調整する仕組みが導入されます(令和8・9年分は上昇率6%を反映)。
所得階層ごとの新しい基礎控除額が一覧になっていますが、合計所得金額655万円超2,350万円以下の方は本則62万円のみ、それ以下の方は次の「特例加算」が上乗せされます。
1-2. 特例加算で最大42万円を上乗せ(令和8・9年分)
令和7年度改正で導入された基礎控除の特例について、加算額が一時的に拡大します。
合計所得金額 489万円以下の方は、本則62万円に特例加算42万円がプラスされ、基礎控除額は合計104万円となります。
このうち 37万円分は恒久措置、追加の5万円分は令和8・9年分のみの時限措置である点がポイントです。
2. 給与所得控除の最低保障額も74万円に
給与収入のみの方に影響が大きいのが、給与所得控除の最低保障額の見直しです。
本則額:65万円 → 69万円
特例加算:さらに 5万円 を上乗せ(令和8・9年分の時限措置)
したがって、令和8・9年分は 最低保障額74万円 となります(年間給与収入220万円以下が対象)。
3. 「年収の壁」は178万円へ
上記の基礎控除・給与所得控除を組み合わせると、所得税がかからない年収の目安が変わります。
基礎控除:最大104万円
給与所得控除(最低保障):74万円
合計すると178万円。そのため、給与収入のみで他に所得調整要因がない方については、年収178万円までは所得税が発生しない設計になります(住民税は別途計算が必要です)。
いわゆる「年収の壁」が、従来の100万円・103万円といった水準から178万円へシフトするイメージですので、パート・アルバイトの働き方を検討されているご家庭にとっても重要な改正になります。
令和8年分から適用
月次の源泉徴収は従来どおり行ない、令和8年12月以降の年末調整でまとめて精算される予定です。
4. 扶養親族・ひとり親・勤労学生の所得要件も連動して見直し
基礎控除・給与所得控除の引上げに合わせて、家族関連の各種要件も見直されます。
配偶者控除・扶養控除の判定で使う「同一生計配偶者・扶養親族の合計所得金額要件」→ 58万円以下 → 62万円以下 に引上げ
ひとり親控除の対象となる子の所得要件→ 58万円以下 → 62万円以下 に引上げ
勤労学生控除の所得要件→ 85万円以下 → 89万円以下 に引上げ
令和9年分以降、ひとり親控除の控除額は35万円 → 38万円に増額
扶養判定に直接影響しますので、年末調整時の扶養控除等申告書の確認がより重要になります。
5. 住宅ローン控除は5年延長・省エネ性能でメリハリ
住宅ローン控除については、令和12年末まで適用期限が5年延長される一方で、省エネ性能に応じた「メリハリ」がさらに強まります。
主なポイントは次のとおりです。
認定住宅・ZEH水準省エネ住宅(既存住宅含む)の借入限度額は3,500万円に引上げ
一方、単なる「省エネ基準適合住宅」については、新築・既存とも借入限度額を引下げ、令和10年以降の一部新築は控除対象外
省エネ基準以上の既存住宅の控除期間は10年 → 13年へ延長
合計所得1,000万円以下であれば、既存住宅でも床面積40㎡以上で適用可(ただし、特例対象個人の上乗せ措置と併用不可)
令和10年以降、災害レッドゾーンに新築する住宅は控除対象外
今後マイホーム取得を検討される場合、購入タイミングだけでなく住宅性能・立地条件の見直しも重要になります。
6. 青色申告特別控除は「電子化するほど有利」に
個人事業主・不動産オーナーにとって大きな改正が、青色申告特別控除の再編です。
<6-1. 控除額の新しい3区分>
令和9年分以後の所得税から、控除額は次の3段階になります。
75万円控除
複式簿記
e-Taxによる電子申告
加えて
優良な電子帳簿保存
または請求書データ等との自動連携のいずれかを満たす場合
65万円控除
複式簿記
e-Taxによる電子申告
10万円控除
簡易簿記
ただし前々年の事業・不動産収入が1,000万円超の場合は対象外
現行の「55万円控除」は廃止され、電子申告を行わない複式簿記は10万円控除に格下げとなります。
6-2. 実務上のポイント
将来的に65万円・75万円控除を確保するには、e-Taxと会計ソフトの電子帳簿機能の活用が必須になります
電子帳簿保存法の要件を満たすかどうか、今のうちにチェックしておく必要があります
7. 通勤手当・食事の支給など身近な非課税枠の拡大
給与計算実務に関わる改正もいくつか予定されています。
マイカー通勤手当
片道65km以上の区分が細分化され、最大で月額66,400円まで非課税に(駐車場代は最大5,000円を加算)
令和8年4月以降に支給される通勤手当から適用。
会社からの食事の支給
非課税限度額:月額3,500円 → 7,500円に倍増。
深夜勤務に伴う夜食代
現金支給の非課税枠:1回300円以下 → 650円以下に引上げ。
いずれも令和8年4月以降の支給分から適用予定です。
8. そのほかの主な改正トピック(概要のみ)
詳細は割愛しますが、個人所得課税では次のような論点も盛り込まれています。
高所得者に対する「基準所得金額」課税の強化(閾値1.65億円超・税率30%)
防衛特別所得税(仮称)1%の新設と、復興特別所得税率の見直し
暗号資産(仮想通貨)の申告分離課税化(税率20%)と損失の3年繰越
未成年から利用できる新しいNISA(こども向け積立枠)の創設
セルフメディケーション税制の恒久化・対象医薬品の見直し など
資産運用や暗号資産取引を行っている方は、対応方針の確認が必要です。
9. まとめと今後の実務対応
令和8年度の個人所得課税の改正は、
基礎控除・給与所得控除の拡充による「年収178万円」ラインへのシフト
住宅ローン控除や青色申告特別控除の電子化・省エネ化を促す方向性
通勤手当・食事支給など身近な非課税枠の見直し
といった形で、家計・給与計算・個人事業のいずれにも影響する内容となっています。
特に、
パート・アルバイトの勤務時間調整(年収の壁)
扶養控除・ひとり親控除の判定
住宅取得のタイミング・物件選び
個人事業主の電子申告・電子帳簿対応
については、早めにシミュレーションしておくことをお勧めします。
当事務所では、
令和8・9年分の年末調整・確定申告への影響試算
住宅ローン控除やNISAを含めたライフプラン相談
個人事業主・フリーランスの青色申告体制の整備支援
などを行なっております。
ご自身やご家族のケースで具体的にどう変わるのか気になる方は、お気軽にご相談ください。


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