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令和8年度改正のグループ間取引書類保存特例とは?必要な記載事項と補完書類を税理士が解説

  • yasuda-cpa-office
  • 23 時間前
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、企業グループ内で行なう一定の取引に関する書類保存ルールが新たに整備される予定です。とくに、親子会社間や実質的支配関係のある法人間で、技術指導などの役務提供や無形資産の譲渡・貸付けを行っている会社にとっては、今後の契約書や社内資料の作り方に影響する重要な改正といえます。


今回の制度では、取引関連書類等に「対価の額を算定するために必要な事項」の記載や記録がない場合、これを補う書類を別途取得または作成し、保存することが求められます。資料によると、この補完書類等が保存されていない場合には、青色申告の承認取消事由等に該当し得るとされています。


グループ会社間の取引は、社内的には当然のやり取りとして処理されがちですが、税務上は後から説明できる状態にしておくことが重要です。今回は、このグループ間取引の書類保存特例について、実務上押さえておきたいポイントを整理して解説します。


グループ間取引の書類保存特例とは?

この特例は、内国法人が持株関係や実質的支配関係などのある関連者との間で、一定の特定取引を行う場合に関係する制度です。資料では、対象となる取引として、工業所有権等の譲渡・貸付けや、技術指導などの一定の役務提供が挙げられています。


そして、これらの取引について、注文書、契約書、領収書などの取引関連書類等に、対価の算定根拠となる情報がきちんと記載されていなければ、別途その内容を明らかにする補完書類等を保存しなければならない、というのが今回の制度の骨子です。


言い換えると、単に「グループ会社間で請求書を発行して終わり」では足りず、その金額がどのように決まったのかを後から確認できる状態が必要になるということです。


いつから適用されるのか

資料では、この書類保存特例は令和8年4月1日以後に企業グループ間で行なう一定の役務提供等から関係してくると整理されています。


したがって、令和8年度以後にグループ内で技術指導料、ライセンス料、業務委託料などを設定している企業では、今のうちから契約書や請求関連資料の記載内容を確認しておくことが大切です。


「対価の額を算定するために必要な事項」とは何か

今回の実務で最も重要なのが、この「対価の額を算定するために必要な事項」の中身です。資料では、必要事項として大きく次の2つが挙げられています。


ひとつは、その取引に関する資産又は役務の提供の明細です。もうひとつは、内国法人が支払うこととなる対価の額の計算の明細です。


たとえば、一定の役務提供であれば、次のような内容が考えられます。

  • 役務提供の内容

  • 取引条件(単価等)

  • 役務提供の開始時期や期間

  • 取引価格、その計算方法


また、工業所有権等の譲渡や貸付けについても、対象となる権利の内容、譲渡や貸付けの時期、単価や取引価格、その計算方法などが想定されています。


一つの契約書に全部書いていなくてもよい

実務上、安心材料になるのがこの点です。資料によると、必要事項は一つの取引関連書類等の中にすべて記載されていなければならないわけではありません。複数の取引関連書類等を組み合わせてみたときに、対価の額の算定根拠が把握できれば、それで足りるとされています。


つまり、契約書には基本条件だけを書き、具体的な単価表や作業期間は別紙や社内計算書で管理しているようなケースでも、全体として説明可能な状態であれば対応できる可能性があります。


注文書・契約書・領収書などの取引関連書類等に必要事項の記載があれば補完書類は不要であり、記載が足りない場合には補完書類等の保存が必要になる流れが示されています。


補完書類が必要になるケース

反対に、契約書や注文書、請求書などを見ても、どの役務に対して、どの期間分を、どの単価で請求しているのか分からない場合には、補完書類の作成・保存が必要になります。

たとえば、次のようなケースは注意が必要です。

  • 契約書に「業務支援一式」などとだけ記載され、内容が曖昧な場合

  • 月額請求の根拠となる単価や時間数が資料上確認できない場合

  • 技術指導料やライセンス料について、提供期間や計算方法が不明な場合

  • 関連会社間で毎月同額請求しているが、その算定根拠が残っていない場合

こうした場合、後から税務調査で説明を求められた際に対応が難しくなるおそれがあります。


金額の妥当性や設定理由まで書く必要はあるのか

ここは多くの企業が気にするポイントだと思います。グループ会社間の取引価格について、「第三者間と比べて適正か」「なぜその金額にしたのか」まで書かなければならないのか、不安に感じる担当者も少なくありません。


この点について資料では、今回の特例の目的は、実際に一定の役務提供等が行なわれたかどうかの確認と、対価の額やその算定根拠を把握することにあると整理されています。したがって、必要なのはあくまで単価等の取引条件や提供期間など、金額計算のベースが分かる事項であり、第三者取引と比較した妥当性や対価の額の設定理由そのものまでの記載は不要とされています。


つまり、この制度は移転価格税制のように価格の適正性を直接立証するためのものではなく、まずは取引実態と算定根拠を明らかにするための書類保存ルールと捉えると理解しやすいでしょう。


ただし、税務調査で説明を求められる可能性はある

もっとも、妥当性の記載が不要だからといって、どのような金額でも問題ないという意味ではありません。資料では、保存書類に記載された対価の額が実態と乖離している場合には、税務調査の際に説明を求められることもあり得るとされています。


そのため、最低限の法令対応としては単価や期間、計算方法などを残せばよいとしても、実務上は次のような資料もあわせて整理しておくと安心です。

  • 役務提供の実績が分かる報告書

  • 工数表や稼働記録

  • 単価設定の社内承認資料

  • グループ内請求のルール一覧

  • ライセンス使用状況や提供内容の説明資料

税務調査では、形式的な保存の有無だけでなく、実際に取引が存在し、その金額に一定の合理性があるかも見られる可能性があるためです。


実務上の対応ポイント

今回の改正を踏まえると、グループ会社を持つ企業では、次のような視点で見直しを進めるのが有効です。


まず、関連当事者間で継続的に行っている役務提供や無形資産取引を洗い出すことです。そのうえで、契約書、注文書、請求書、別紙単価表、業務報告書などを確認し、単価、内容、提供期間、計算方法がつながる形で残っているかを点検する必要があります。

次に、記載が不足している取引については、早めに補完書類の様式を整えることです。とくに、グループ内で慣行的に処理してきた役務提供は、契約や請求の文言が簡略になっていることが多いため、今回の制度改正を機に文書管理を見直す価値があります。


まとめ

令和8年度税制改正で創設されるグループ間取引の書類保存特例では、関連者間の一定の無形資産取引や役務提供について、対価の額を算定するために必要な事項を取引関連書類等または補完書類等で保存することが求められます。必要事項としては、役務内容、単価等の取引条件、提供期間、取引価格やその計算方法などが想定されています。一方で、第三者比較による適正性や金額設定理由までの記載は不要とされています。


グループ会社間取引は、日常業務の延長で処理されやすい分、算定根拠の記録が弱くなりがちです。今回の改正を機に、契約書・請求書・別紙資料・補完書類を組み合わせて、後から説明できる状態にしておくことが重要です。グループ内役務提供やライセンス取引がある企業は、早めに文書管理体制を見直しておくとよいでしょう。




神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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