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デューデリ費用は「全額損金」にならない?東京地裁が示した判断枠組みと実務の落とし穴

  • yasuda-cpa-office
  • 10 時間前
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


M&Aでは、仲介会社への報酬、法務・財務デューデリジェンス(DD)費用などがまとまった金額になります。これらを当期の損金にできるのか、それとも株式の取得価額に含めて資産計上(=当期損金にならない)すべきなのかは、税務上の重要論点です。


東京地方裁判所は、株式取得型M&Aにおけるデューデリ費用が「有価証券の購入のために要した費用」に該当するかを巡る事件で、国の更正処分等の一部を取り消し、判断枠組みを示しました。本件は、株式購入によるM&Aで生じたデューデリ費用の税務上の取扱いについて、初の司法判断とされています。

この記事では、判決が示した考え方を、実務で使える形に整理します。


1. 争点:デューデリ費用は「株式の取得価額に加算」か「当期損金」か

本件では、M&A仲介会社への報酬などデューデリ費用約1億2,000万円を損金算入して申告したところ、税務当局が「有価証券の購入のために要した費用」に当たるとして、株式の取得価額に加算すべきと判断し更正処分等を行ったことから争いになりました。


2. 東京地裁の判断枠組み:蓋然性と必要性を具体事情で見る

東京地裁は、「有価証券の購入のために要した費用」について、次の2点を満たすものだと整理しました。

・特定の有価証券の購入に向けられた費用であること・当該費用が客観的に必要とされるものであること

そして、M&A過程の費用は一律に判断できないとして、少なくとも次の事情を踏まえて検討すべきとしました。

・契約または個々の業務の目的と内容・一連の取引過程における当該契約や業務の位置付け・履行時点での株式購入の蓋然性の程度・その他具体的事情

重要なのは、株式購入の不確実性が相当程度解消していることが必要であり、必ずしも正式な意思決定機関での決議まで要しない場合もある、と述べている点です。実態に照らして判断する、という方向性が明確です。


3. どの費用がどう判断されたか:成功報酬は取得価額、その他は否定

東京地裁は本件各費用について、次のように結論づけました。


取得価額に入ると判断

  • 成功報酬(費用③)約9,700万円最終契約が締結された場合に支払うもので、実際に株式譲渡契約締結を受けて支払われたため、株式購入に向けられた費用であり、購入に客観的に必要とされると判断

取得価額に入らないと判断

  • 情報提供料(費用①)企業提携の方法が限定されておらず事業譲渡もあり得ることが明示され、契約締結後すぐ支払う性質等から、株式購入の蓋然性が高いとは認められない

  • 中間報酬(費用②)基本合意に最終契約締結義務がないこと等が明示され、DD結果を踏まえて購入判断する前提だったため、意向表明や基本合意だけでは株式購入の不確実性が相当程度解消したとはいえない

  • 法務調査の報酬等(費用④)基本合意時点では不確実性が相当程度解消したといえず、調査は企業提携を行なうか、手法をどうするかの判断材料に過ぎないと評価


この結果、国の更正処分等の一部が取り消されています。


4. 実務への影響:契約の型と支払タイミングで処理が分かれる

今回の判決から、少なくとも次の示唆が得られます。


1)成功報酬は取得価額に入る可能性が高い最終契約締結を条件に支払う成功報酬は、株式購入に直結しやすく、取得価額加算となるリスクが高いといえます。


2)情報提供料やDD費用でも「必ず損金」とは限らないが、一律に取得価額でもないDDは対象会社を特定していても、株式購入の蓋然性がどの程度高まっていたか、契約上どう位置付けられていたか次第で結論が変わり得ます。


3)基本合意や意向表明があっても自動的に取得価額とはならない基本合意の条項(拘束力、最終契約義務の有無、条件成就の位置付け)や、当時点の交渉状況の実態が重要になります。


5. 税務調査に備えるチェックポイント

M&Aの費用は金額が大きく、税務調査でも見られやすい論点です。次を整備しておくと、判断のブレを抑えられます。


  • 仲介契約、基本合意、最終契約の条項整理(手法が株式取得に限定されていたか、義務の有無)・各費用の請求書、業務内容、成果物の保存(目的と内容の説明資料)

  • 支払時点での意思決定や交渉状況を示す社内資料(稟議、取締役会資料、社内メモ等)

  • 費用の内訳を「検討段階」「交渉・DD段階」「最終契約締結段階」で区分して会計処理を検討


まとめ:デューデリ費用は「蓋然性」と「必要性」で個別判定、成功報酬は要注意

東京地裁は、株式取得型M&Aにおけるデューデリ費用について、株式購入の蓋然性の程度などの具体事情を踏まえて、「特定の有価証券の購入に向けられ、客観的に必要とされる費用か」を判断すべきとしました。


実務では、成功報酬は取得価額に加算される可能性が高い一方、情報提供料やDD費用は契約内容と交渉段階によって結論が分かれ得ます。M&Aに着手する段階から、契約条項と費用の位置付けを整理し、証拠資料を残すことが重要です。


神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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