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令和8年分の人的控除は12月1日前後で取扱いが変わる?基礎控除引上げと年末調整の実務対応を解説

  • yasuda-cpa-office
  • 3 日前
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、所得税の人的控除に関する見直しが予定されています。具体的には、基礎控除額の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、そして同一生計配偶者や扶養親族の所得要件の見直しなどが含まれています。会社員や個人事業者に広く関係する改正であるため、関心を持っている方も多いのではないでしょうか。


ただし、今回の改正で実務上特に注意したいのは、令和8年分の所得税に適用される改正であっても、実際の施行日は令和8年12月1日予定とされている点です。このため、年末調整や準確定申告のタイミングによって、改正後のルールをそのまま使えるケースと、いったん現行法で処理したうえで後日対応が必要になるケースに分かれます。

企業の給与担当者、経理担当者、そして年の途中で出国や相続が関係するケースでは、特に見落とせない論点です。


令和8年度税制改正で何が変わるのか

今回予定されている主な見直しのひとつが、基礎控除額の引上げです。添付資料によれば、合計所得金額2,350万円以下の者について、基礎控除額を4万円引き上げる方向とされています。あわせて、給与所得控除の最低保障額についても、現行65万円から69万円へ引き上げられる予定です。


さらに、基礎控除等の引上げに連動して、人的控除の判定に関わる所得要件も見直されます。たとえば、同一生計配偶者や扶養親族の合計所得金額要件は58万円以下から62万円以下へ、勤労学生の合計所得金額要件は85万円以下から89万円以下へ引き上げられる予定です。ひとり親控除に関係する子の所得要件についても、同様に見直しが予定されています。

つまり、今回の改正は単に基礎控除だけの話ではなく、年末調整や扶養判定の実務全体に影響する改正といえます。


基礎控除等の特例も要確認

資料では、令和8年分・令和9年分に関する特例措置にも触れられています。合計所得金額が655万円以下の場合には、「基礎控除等の特例」による基礎控除の加算が予定されており、その年の合計所得金額が489万円以下であれば42万円、489万円超であれば5万円の加算となる見込みです。


また、「給与所得控除の最低控除額等の特例」も創設予定で、令和8年または令和9年の給与等の収入金額が220万円以下の場合には、給与所得控除額が74万円となる方向です。

給与計算や年末調整を担当する立場から見ると、単純に「控除額が4万円上がる」とだけ理解するのでは足りず、所得区分や収入金額に応じた特例の有無まで確認しておく必要があります。


なぜ12月1日前後で取扱いが分かれるのか

今回の改正で最も実務的な注意点はここです。添付資料によると、基礎控除引上げ等の改正制度は令和8年12月1日に施行される予定とされています。そのため、同じ令和8年分の所得税であっても、給与の最後の支払日や申告の時期によって適用関係が異なります。

具体的には、令和8年中に支払うべき給与等で、その最後の支払日が12月1日以後である場合には、改正後の制度に基づいて年末調整を行なうことになります。一方で、その最後の支払日が11月30日以前である場合には、改正前の現行法によって年末調整を行なうこととされています。

この時期の違いが、年末調整実務に直接影響します。


通常の年末調整は改正制度を反映

多くの会社では、12月に最後の給与支払があり、そのタイミングで年末調整を実施します。この場合、令和8年12月1日以後に年末調整を行なうことになるため、改正後の基礎控除や扶養要件の見直しを反映した年末調整を行なうことになります。


したがって、企業の給与担当者は、令和8年の年末調整に向けて、従業員の扶養申告書や配偶者控除等申告書の確認方法、システム設定、社内案内文などを見直しておく必要があります。特に、配偶者や扶養親族の所得要件の引上げは、従来は対象外だった人が対象に入る可能性もあるため、見落としがないようにしたいところです。


11月30日以前に年末調整を行なう場合はどうなる?

注意が必要なのは、年の途中で従業員が死亡した場合や出国した場合です。こうしたケースでは、最後の給与支払が11月30日以前になることがあり、その時点で年末調整を行なうことがあります。資料では、この場合、改正前の現行制度に基づいて令和8年分の所得税を精算することになると示されています。


ただし、それで終わりではありません。このケースで改正後の制度を反映させるには、本人が確定申告を行なう必要がある方向とされています。つまり、会社側の年末調整だけでは改正メリットを取り込みきれない可能性があるということです。

給与担当者としては、対象者やその家族に対して、後日の確定申告が必要になり得ることを案内できる体制があると親切です。


準確定申告は更正の請求で対応

個人事業者などが年の途中で死亡または出国した場合には、準確定申告が必要になることがあります。この点について資料では、令和8年11月30日以前に令和8年分の準確定申告を行なった場合、その時点では改正制度は適用されないと整理されています。

そのうえで、改正制度を反映するには、令和8年12月1日から5年以内に更正の請求を行なうことで対応できるとされています。


相続税や準確定申告に関与する場面では、どうしても申告期限対応が優先されがちですが、人的控除の改正があとから適用可能になるケースもあるため、後日の更正の請求まで視野に入れておくことが重要です。


実務で押さえておきたい3つのパターン

資料の整理を踏まえると、令和8年分の人的控除の適用関係は、大きく次の3つに分けて考えるとわかりやすいです。

まず、令和8年12月1日以後に年末調整を行なう通常ケースでは、年末調整の段階で改正制度を適用します。次に、11月30日以前に死亡や出国等により年末調整を行なうケースでは、いったん現行法で精算し、改正制度を反映するには確定申告で対応します。そして、11月30日以前に死亡等による準確定申告を行なうケースでは、その時点では改正制度を使わず、12月1日以後に更正の請求で対応することになります。

この3区分を理解しておくと、年末に慌てにくくなります。


企業・税理士が今のうちに確認したいこと

今回の改正は、年末調整ソフトの設定変更だけで終わる話ではありません。実務上は、まず人的控除に関する社内説明の見直しが必要です。基礎控除や扶養親族の判定基準が変わる以上、従業員向けの案内文やQ&Aも改訂しておく必要があります。


また、年の途中で退職・死亡・出国するケースへの対応フローも見直したいところです。通常の12月年調だけを前提にしていると、11月30日以前の処理で現行法対応になることや、その後に確定申告・更正の請求が必要になることを見落としやすくなります。

税理士事務所としては、顧問先に対して、単なる改正内容の説明にとどまらず、「いつの手続なら改正後ルールが使えるのか」まで整理して案内することが、実務的な付加価値につながるでしょう。


まとめ

令和8年度税制改正では、基礎控除額や給与所得控除の最低保障額の引上げ、同一生計配偶者や扶養親族の所得要件の見直しなど、所得税の人的控除に関する重要な改正が予定されています。もっとも、これらは令和8年12月1日施行予定であるため、令和8年分の所得税であっても、12月1日以後の年末調整では改正制度を適用し、11月30日以前に行なう年末調整や準確定申告では原則として現行法対応となります。さらに、11月30日以前の年末調整では確定申告、準確定申告では更正の請求によって改正内容を反映する流れが想定されています。


今回の改正は、控除額そのものの見直しだけでなく、適用時期による取扱いの違いが実務上の重要ポイントです。企業の給与担当者、個人事業者、相続対応に関わる方は、年末調整や準確定申告の時期を踏まえて、早めに対応方針を整理しておくことをおすすめします。




神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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