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令和7年度改正で退職所得控除の調整規定が拡大

  • yasuda-cpa-office
  • 7月14日
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


令和7年度税制改正により、退職所得控除の調整規定が見直され、iDeCo(個人型確定拠出年金)の老齢給付金(DC一時金)を活用した節税が制限されるケースが拡大しました。

老後の資産形成と税務戦略の両立を図る方が多い中で、見落とされがちなこの制度変更を正しく理解しておくことが重要です。


■ 退職所得控除の「調整規定」とは?

同一年または近年に複数の退職金等の支払いを受けた場合、重複する勤続年数(加入期間)を排除して、退職所得控除を計算するルールのことです。

従来は主に以下のケースが対象でした:

  • 支払年の前年以前4年内に退職金等を受け取った場合

  • DC一時金を受け取った年の前年以前19年内に退職金を受け取った場合


■ 【改正ポイント】“9年ルール”が新たに追加!

改正後は、新たに以下のケースが追加されました:

退職手当等を受ける年の前年以前9年以内に、DC一時金を受け取っていた場合も調整規定の対象とする

つまり、例えば次のようなスケジュールの場合、iDeCoを利用していても控除額が圧縮される可能性があります:

  • 60歳:iDeCoからDC一時金を受け取り

  • 65歳:企業から退職金を受け取り→ この場合、「iDeCo加入期間」と「勤続年数」が重複するため、重複分を除外した上で控除額を計算する必要があります


■ 【適用時期】令和8年1月1日以後の支払いから

本改正の適用は、令和8年1月1日以降に支払われるDC一時金または退職金等から対象になります。つまり、すでにiDeCoに加入している方でも、退職タイミングによってはこの制度の影響を受けます。


■ 小規模企業共済の解約手当金はどうなる?

同じく退職所得控除の対象となる「小規模企業共済の解約手当金等」については、従来どおり“前年以前4年内”ルールが適用されます。

したがって、以下のようなタイミングであれば、調整規定の適用を回避できます:

  • 60歳:DC一時金

  • 70歳:小規模企業共済解約手当金

  • 75歳:企業退職金→ この場合は、各控除額の計算において重複排除不要です

ただし、65歳で小規模企業共済、70歳で企業退職金を受けるケースでは、「9年以内にDC一時金あり」と判断されるため、解約手当金も調整対象になる点に注意が必要です。


■ 【図解】対象となる3つのパターン(ページ3)

ファイル3ページ目に掲載された図表では、対象となるケースを視覚的にまとめています:

  1. 4年以内に退職金 → 退職金受取(旧ルール)

  2. 9年以内にDC一時金 → 退職金受取(新ルール)

  3. 19年以内に退職金 → DC一時金受取(従来のDC一時金起点のルール)

どのパターンでも、重複期間を排除して退職所得控除額を再計算する必要があります。


■ まとめ:老後の資金設計に「税務の時系列」が不可欠に

iDeCoや共済制度を活用する際には、「いつ受け取るか」「その後に退職金があるか」までを含めた戦略設計が欠かせません。今回の改正により、従来の節税スキームが通用しないケースが増える可能性があります。




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