中小企業経営強化税制「E類型」導入時の落とし穴
- yasuda-cpa-office
- 11月14日
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
1.令和7年度改正で新設された「E類型」とは
令和7年度税制改正で、中小企業経営強化税制に新たに「E類型(経営規模拡大型)」が追加されました。E類型では、従来対象外であった建物も税制優遇の対象となるなど、適用範囲が広がっています。
ただし、このE類型には他の優遇制度との併用ができない重要な制約がある点に注意が必要です。
2.E類型と「30万円特例」「中小企業投資促進税制」は併用不可
多くの中小企業で利用されている次の2つの税制特例は、E類型と同一期間に適用できません。
制度名 | 内容 | 所得税・法人税上の根拠 |
少額減価償却資産の特例(30万円特例) | 1個30万円未満の資産を全額損金算入 | 租税特別措置法第67条の5第1項 |
中小企業投資促進税制 | 設備投資額の特別償却や税額控除が可能 | 同法第42条の6第1項 |
国税庁の改正概要によると、E類型の認定を受けた経営力向上計画に記載した設備等については、上記2つの制度の対象から除外されると明示されています。
つまり、E類型の投資計画期間中に取得した資産については、「30万円特例」や「中小企業投資促進税制」を同時に使うことができないということです。
2.併用不可の期間は「初年度だけではない」
注意すべきは、この制限がE類型の初年度だけに限られないことです。
E類型では、経営者が経営規模拡大要件(売上高100億円宣言など)や投資利益率要件を満たす「投資計画」を策定し、経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
この投資計画は、通常複数年にわたって継続するため、その期間中に取得した資産はすべて併用制限の対象になります。
したがって、E類型を選択した企業では、「E類型の投資期間が続く限り、30万円特例等は使えない」という点を忘れてはいけません。
3.投資計画期間の内外での適用関係(イメージ図)
3月決算法人を例にして、以下のように整理してみましょう。
R7.4 ───── 少額資産A取得(投資計画前) → 30万円特例「適用可」
R8.4 ───── 少額資産B取得(投資計画期間中) → 「適用不可」
R8.8 ───── 少額資産C取得(投資計画期間中) → 「適用不可」
R9.4 ───── 少額資産D取得(投資計画後) → 30万円特例「適用可」
このように、投資計画期間外であれば制限は解除されるため、資産の取得時期が「投資計画期間中」か「期間外」かを確認することが実務上のカギとなります。
4.実務対応のポイント
(1)投資計画期間の明確化
投資計画書には期間の始期・終期を明確に記載しておくこと
会計期間とは一致しない場合が多いため、管理台帳で別途区分しておくと安心です
(2)資産取得時のチェック体制
購入予定の資産が「E類型対象」に該当するかを社内で確認
30万円特例の適用を予定している場合は、投資計画外のタイミングでの取得を検討
(3)他の優遇制度との調整
たとえば「中小企業投資促進税制」での特別償却を想定していた場合も、 E類型の計画期間中は適用できない点に注意
この点を誤ると、想定していた節税効果が得られない可能性があります。
5.税理士からのコメント
E類型は、建物も対象となるなど使い勝手の良い制度ですが、他の中小企業向け税制と重複適用ができない点が最大の注意ポイントです。
とくに、
少額資産の取得を頻繁に行なう企業
中小企業投資促進税制を毎年活用している企業
は、投資計画期間と資産取得時期の整合性を必ず確認しましょう。
投資の前に「どの税制を優先適用するか」を事前に検討しておくことで、余計な税務修正や損金漏れを防ぐことができます。


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