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上場企業のコーポレートガバナンス動向

  • yasuda-cpa-office
  • 11月1日
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


今回は、東京証券取引所が2025年9月25日に公表した「2025年3月期決算会社の定時株主総会の状況」を参考に、企業開示や株主対応の最新動向を整理します。


1.招集通知の早期開示が進む一方で、依然として課題も

今回の調査対象は、2025年3月期決算会社のうち6月末までに定時株主総会を開催した2,223社です。そのうち、総会開催日の28日前までにTDnetで招集通知を開示した企業は20.9%(前年比+0.8pt)と、前年からわずかに上昇しました。


特に時価総額が大きい企業ほど早期開示の傾向が顕著で、

  • 5,000億円以上の企業:61.9%

  • 1,000億円以上5,000億円未満:36.5%と、規模による明確な差が見られます。

これは、ガバナンス体制の充実度や内部統制の整備状況が開示スピードに直結していることを示しています。中小規模の上場企業では、監査や開示体制のリソースが限られているため、早期開示が難しい現実もあります。


2.電子提供制度の普及で「紙の発送削減」が進行

電子提供制度(2023年度から全面導入)により、株主宛ての招集通知等を電子的に提供することが可能になりました。今回の調査では、発送書類を削減した会社が全体の44.4%(前年比+4.9pt)に上昇。

特にプライム市場上場企業では62.2%(+8.4pt)と過半数を超え、デジタル化が着実に進んでいます。ただし、スタンダード・グロース市場では対応が遅れており、電子化の負担や株主層の高齢化が要因と考えられます。


3.英文招集通知とガバナンス情報開示の格差

海外投資家対応として英文招集通知を作成する企業は年々増加しています。しかし、その内容は市場区分によって大きく異なります。

市場区分

「本文+参考書類のみ」の英文提供率

「事業報告+計算書類を含む全訳」の提供率

プライム

95.1%

5,000億円以上の企業で68.3%

スタンダード

16.9%

25.8%(1,000億円以上5,000億円未満)

グロース

7.4%

16.0%(250億円以上1,000億円未満)

つまり、海外投資家との対話力には依然として格差があることがわかります。今後は、英文開示の充実度が企業評価やIR活動の質に直結していくと考えられます。


4.議決権電子行使プラットフォームの利用状況

議決権電子行使の普及も進展しています。全体での利用率は56.1%(+0.8pt)と過半数を超えました。

  • プライム上場企業:97.5%とほぼ全社が対応済み

  • スタンダード上場企業:15.6%

  • グロース上場企業:5.7%

上場市場間の差が非常に大きく、特に中堅・新興企業では対応の遅れが課題といえます。


5.まとめ:開示の「スピード」から「質」へ

今回の東証調査では、開示の迅速化や電子化が進む一方で、市場区分や企業規模による格差が浮き彫りになりました。今後は、単に早期開示を目指すだけでなく、

  • 投資家への英語情報提供の充実

  • 株主総会資料の透明性向上

  • IR・SR(株主対応)体制の強化

といった「開示の質の向上」が求められます。



神戸 公認会計士 決算支援 開示書類作成

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