グループ通算制度取りやめの「やむを得ない事情」
- yasuda-cpa-office
- 10月18日
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
今回は、グループ通算制度における「取りやめ承認」の考え方と実務上のポイントを整理します。
1.グループ通算制度の概要
令和4年4月から導入されたグループ通算制度は、従来の「連結納税制度」に代わり、企業グループ全体での所得・欠損金の通算を可能にする制度です。通算グループに加入した法人は、原則として継続的に通算制度を適用する義務があり、任意に取りやめることはできません。
ただし、国税庁長官の承認を受けた場合に限り、制度の適用を取りやめることが認められます。この承認には、いわゆる「やむを得ない事情」が必要とされており、その具体例が今回、明確に示されました。
2.「やむを得ない事情」とは
通算制度の取りやめは、原則として次のような「グループ全体の再編や経営環境の変化」によるケースで認められるとされています。
(1)グループ再編・事業再構築によるもの
グループ内の再編(吸収合併・分社型分割など)により、通算グループの実態が大きく変わる場合
(2)不可抗力・予見不能な事由
経理部・税務部の人員が適用開始時から急激に減少した場合
3.単なる経営上の判断では認められない
一方で、以下のような任意的・便宜的な理由では承認が認められません。
税負担を軽減するために通算をやめたい
特定の子会社の欠損金を活用できないため、別法人として扱いたい
一時的な会計処理上の利益を得るために通算を外したい
国税庁は、「制度趣旨に反しない範囲でのみ承認を行う」と明言しており、通算制度の安易な離脱は認められない姿勢を示しています 。
4.承認申請の実務ポイント
通算制度の取りやめを希望する場合は、以下の点に留意する必要があります。
項目 | 内容 |
提出書類 | 「グループ通算制度の取りやめ承認申請書」および添付資料 |
提出期限 | 取りやめを希望する事業年度開始の日の前日まで |
添付資料 | 再編スキーム図、取締役会議事録、株主構成表など、やむを得ない事情を裏付ける資料 |
承認機関 | 所轄税務署を経由して国税庁長官が判断 |
特に、再編の必要性や経済合理性を具体的に説明できる書類の準備が重要です。単なる「経営判断」ではなく、「法的・構造的な制約」を明確に示すことが承認のポイントとなります。
5.まとめ:通算制度は長期継続が原則
通算制度は、税務の安定性を高める一方で、グループ全体としての一貫性が求められます。そのため、制度開始後に「やめたい」と申し出る場合には、慎重な検討と十分な理由が不可欠です。
とはいえ、「経営再編・法的制約・不可抗力」などの真にやむを得ない事情がある場合には、柔軟に取り扱われる可能性があると言えます。
当事務所では、グループ通算制度の導入・適用・離脱に関する税務相談や申請書作成のサポートを行なっております。グループ再編やM&Aに伴う通算制度の見直しを検討されている方は、ぜひご相談ください。


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