「年収の壁」はどう見直されたのか
- yasuda-cpa-office
- 5月30日
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
令和7年度(2025年度)の税制改正により、いわゆる「年収の壁」に関する制度が大きく見直されました。これまで、「103万円の壁」や「150万円の壁」が就業抑制の要因として問題視されていましたが、今回の改正では課税ラインが引き上げられ、多くの家庭にとってメリットとなる内容です。
この記事では、主に所得税に関する年収の壁の見直し内容を、Q&A形式でわかりやすく整理してご紹介します。
■「103万円の壁」は160万円に引き上げ!
従来は、年間給与収入が103万円を超えると、本人に所得税が課されることから、パートやアルバイトを103万円以内に抑える就業調整が起きていました。
しかし、改正後は次のように変わりました:
【改正前】
基礎控除:48万円
給与所得控除:55万円
所得税が非課税となるライン:年収103万円
【改正後】
基礎控除:最大95万円(特例加算含む)
給与所得控除:65万円
所得税が非課税となるライン:年収160万円以下
つまり、年収160万円以下であれば所得税がかからないため、これまでよりも広い範囲で働くことが可能になります。
■扶養者側の壁も「123万円」へと引き上げ
従来、扶養親族の給与収入が103万円を超えると、親など扶養者は「扶養控除(38万円)」や「特定扶養控除(63万円)」を適用できなくなる“扶養者の壁”がありました。
今回の見直しにより:
合計所得金額の要件:48万円 → 58万円に引き上げ
給与所得控除の最低保障額:55万円 → 65万円に引き上げ
結果として、給与収入が123万円以下なら扶養親族として控除適用可能
さらに、大学生年代の子がいる家庭では、「特定親族特別控除(新設)」により、子の年収が150万円以下であれば63万円の控除が認められます(段階的に逓減)。
■「150万円の壁」も事実上の緩和へ
配偶者特別控除(最大38万円)は、配偶者の年収が150万円超になると控除額が減少する「150万円の壁」がありました。しかし、今回の改正では以下のように見直されました:
給与所得控除が65万円に上がったことにより、
配偶者の合計所得金額の上限(満額控除が適用される範囲)が95万円まで拡大
結果として、配偶者の給与収入が160万円以下であれば、満額控除(38万円)を受けられるように
■見直しによる実務的影響
企業側:従業員の就業時間増加により、人手不足対策が期待される一方、給与計算・年末調整対応のシステム更新が必要
個人側:パートタイム・アルバイトの働き方に大きな選択肢が広がる
扶養者(親・配偶者):控除喪失リスクが減少、節税効果が広がる
■まとめ
「103万円の壁」「150万円の壁」の見直しは、働く意思のある人にとって新たな機会を提供する改正です。扶養控除や配偶者特別控除といった制度の理解と活用が、家計・節税・就業のすべてに好影響を与えることが期待されます。

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