「106万円の壁」が撤廃へ
- yasuda-cpa-office
- 2 日前
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おはようございます!代表の安田です。
政府は2025年5月16日、いわゆる「106万円の壁」の撤廃を柱とする年金制度改革法案を閣議決定し、通常国会に提出しました。パート・アルバイトなど短時間労働者の厚生年金・健康保険の加入要件を大きく見直す内容で、今後の働き方や企業対応に大きな影響が出る見込みです。
今回はこの改正案の内容をわかりやすく解説します。
■そもそも「106万円の壁」とは?
現行制度では、短時間労働者が以下のすべてを満たすと、厚生年金・健康保険への加入義務が生じます。
[ア] 月収8万8,000円以上(年収換算で106万円)
[イ] 従業員51人以上の企業に勤務
[ウ] 週20時間以上勤務
[エ] 2ヶ月超勤務見込み
[オ] 学生でないこと
つまり、[ア]と[イ]の要件によって、就業調整(勤務時間や年収を抑える行動)が起こる原因となっていました。
■改正のポイント:「賃金要件」「企業規模要件」の撤廃
① 賃金要件(8.8万円以上)の撤廃
全国の最低賃金の引上げ状況を見極めたうえで、公布から3年以内に撤廃される予定です。これにより、「年収106万円を超えたら社保加入」という従来の制限がなくなります。
② 企業規模要件の段階的撤廃
以下のスケジュールで、従業員数の条件が段階的に引き下げられます:
令和9年10月1日:36人以上
令和11年10月1日:21人以上
令和14年10月1日:11人以上
令和17年10月1日:完全撤廃
■影響を受けるのはどんな人?
改正が完全に施行される令和17年(2035年)には、週20時間以上勤務するすべてのパートタイマー等が、勤務先の規模や収入に関係なく社会保険加入義務の対象となります。
■その他の関連改正(抜粋)
事業主の保険料負担を一時的に国が支援する特例(令和8年10月~)
非適用業種(宿泊・農業等)での個人事業所も社保適用に(令和11年10月~)
在職老齢年金の支給停止基準を月50万→月62万円へ引上げ(令和8年4月~)
iDeCoの加入年齢上限を65歳未満→70歳未満へ(公布後3年以内)
■実務への影響と備え
企業側としては、以下のような対応が求められる見込みです:
社会保険の加入者拡大による保険料負担の増加
パート従業員との労務管理・契約更新への影響
給与システムや社保業務の見直し
ただし、国が保険料の一部を補助する「特例措置」も同時に用意されているため、段階的かつ現実的な対応が可能です。
■まとめ
「106万円の壁」撤廃は、短時間労働者のキャリアの選択肢を広げ、就業調整を緩和する大きな一歩です。一方で、企業の社会保険対応が求められるため、早めの情報収集と社内体制の見直しが重要です。

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